笑わぬ聖女の結婚~私の笑顔を見たいがあまり、旦那さまがヤンデレ化しています~
 シガシーン王国は天使と精霊の加護を受ける美しい王国。大陸の西端に位置しており、紺碧にきらめくシア海と、炎を吐く偉大なるホリッカ神山からの恵みをたっぷりと受けることで繁栄してきた国だ。王都のある中央は王族が、それ以外の地域は五侯爵と呼ばれる大貴族がそれぞれ治めている。
 ここエスファーン領は王国のなかでももっとも西に位置しており、シア海に沈む真っ赤な夕日を望むことができる。領主はリシャール・エスファーン侯爵。数年前に亡くなった父親の跡を継いだばかりの、二十四歳の青年だ。美貌、知性、騎士としての才覚、すべてを兼ね備えた『大天使さまの化身』

 対するアリッサは、落ちぶれてしまった貧乏男爵家の娘として生まれた。飛びぬけた才能はないけれど、明るく愛嬌のある子どもであった。貧しいなりに幸せな生活を送っていたある日のこと、アリッサの額に聖女の証である聖石が発現した。九歳のときだ。聖女の力を持つ者は身分にかかわらず、突然変異的に生まれてくるがその数はとても少ない。力のある者は全員、王都の大聖堂の預かりとなり、その力を国のために捧げるべく修業を積むのだ。
 エスファーン領をぐるりと囲むシア海はこの王国に多くの恵みをもたらしてくれるけど、その反面大規模な水害を起こすこともある。同じくホリッカ神山も、大噴火となれば甚大なる被害が及ぶ。
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