同期恋愛は山あり谷あり溺愛あり

 私は、離れようとした。
 それに気付いた彼が、ハンカチを出して顔を拭いてくれた。
 
 「紗良。転籍前に婚約しよう。お前のご両親へ挨拶して、きちんとしよう。指輪してくれ。そうじゃないと俺……」
 
 泣いている私の顔を両手で挟み目をのぞき込む。
 
 「お前をきちんと俺のものだとわかるようにしたい。いいだろ?」
 
 鼻をすする私を見て、ため息をついている。
 
 「……わかった。婚約する。挨拶行く」
 
 大和は喜んでまた私を抱きしめた。
 
 「ありがとう、紗良。子供みたいだけどさ。あの本部長には持ってるスペックが敵わないんだよ。俺勝てない……」
 
 私は笑った。
 
< 291 / 330 >

この作品をシェア

pagetop