私に愛を教えてよ





あ…朝倉くんを呼んでもらった人だ……。




「実糸くん…2人の邪魔したら悪いよ。ねぇ、私達は教室に戻ろ?」




必死で話しかける彼女に見向きもしないで、私の方に歩いてくる。




「琉依ちゃん、来て。」




私を掴む手は、前よりも力強くて強引だった。


「…実糸!」と名前を呼ぶ朝倉くんの声は、どうやら届いてないらしい。


追いかけてきた女子生徒の横を通り過ぎる時、一瞬だったけど彼女が眉間にシワを寄せながら俯いているのが見えた。


目も合わせないくらい避けられてたはずなのに、私を連れ出す彼の後ろ姿が目の前にある。


これがまだ現実かどうかも分かっていない。


彼は近くにある美術室に入ると、私の手をゆっくりと離して振り返る。




「ねぇ、……………まだ間に合う?」




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