【SS】人食いの森
おじさんはいつの間にかいなくなっていて、空も真っ暗になっている。

それでも私は、ルゥを抱きしめ続けた。


気付けば、頬にひやりと、冷たい風が吹き抜けるような感覚がする。

重くなった目をゆっくり動かすと、そこにはぼんやりと光って見える、半透明の……ルゥがいた。




「る、ぅ……?」


《ウォフ》


「っ……ルゥ!」




涙を流して抱き着こうとすれば、私の腕はひんやりする空気の中を掠って、ルゥの体をすり抜ける。

触れることができなかった手を呆然と見下ろせば、ルゥは私の頬を舐めてくれた。

それは、先ほどの……冷たい風が吹き抜けるような感覚と、同じだった。




「ルゥ……本当に、死んじゃったんだ……ゆうれいに、なっちゃったのね……?」


《……》

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