【SS】人食いの森

またあの化け物の声が聞こえる。


僕はここで死んじゃうのかな。

もう、お母さんお父さんに会えないの?


嫌だ。そんなの嫌だ。家に帰りたい。

小学5年生なのにって言われてもいいから、お母さんに抱きしめて欲しい。




《ぅして……たの……》


「ぅわあああああ!」




拳を握りしめて、涙でぐしゃぐしゃな顔を歪めていたら、ひやりと、全身の毛が逆立つおぞましい声が聞こえた。

僕の絶叫が森の中に響き渡って、慌てて体を反転させる。

座り込んだまま後退れば、そこにはぼんやりと光って見える、半透明の女の子がいた。
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