【SS】人食いの森
否が応でも本能が嫌悪する声に怯えた後で、その内容を反芻して目を開ける。
目の前のお化け……女の子は、後ろを気にしながら、僕を急かすように見つめていた。
よく見れば、その顔はクラスで1番可愛い佐久間さんよりも整っていて、透けてさえいなければ見惚れるほど可愛かった。
《立って……お家に帰れるから……》
「き……君は……?」
《話しているひまはないわ……■■■■は足が速いの……急いで……》
「わ……分かった!」
さっきまで、あんなに怖かったというのに……いや、今でも怖いけれど、その子の言葉を信じられる気がして、立ち上がる。
女の子は頷くと、《こっち……》と宙を滑るように僕を先導した。
女の子を見失わないよう、透けた背中を見つめて走ると、また後ろから化け物の声が聞こえてくる。