【SS】人食いの森
女の子は手を振ると、瞬きの合間に姿を消した。
僕は前を向いて、光の下へ走り続ける。
「はぁっ、はぁっ」
いつの間にか、アスファルトの上にいた。
ぼんやりとしていた明かりの正体は、電柱についたライトだ。
僕は明かりの下で、膝に手をついてひたすらに息を吸っては吐く。
こめかみを伝って滴り落ちたのは、ただの汗か、冷や汗か。
バクバクと騒ぐ心臓が落ち着いたのは、それから何十分も後のことだった。
****
大人になった僕は、警察官になって、人食いの森に消えた行方不明者のリストを見た。
顔写真付きのそれを1枚1枚めくって、薄れつつある記憶を呼び起こす。