The Tricks Played by Destiny
「それよりそれを着ろ、ぼけぇ。そのままで居たいなら構わんが」


じろじろと見られるのが気に食わなかったんだろうか、狼はぶるりを身体を振るわせてあたしの目から逸らすとあたしの顔を見ずに言った。

口が動いていないから、本当に言ったかどうかは分からないんだけど。



犬科特有の長い顔を向けて方向を指し示す。その先にはチェアーのひじ掛けに載せられた布。
あれを着る?
ふと下を見ていると。うすっぺらい下着1枚だった。



「はっ?」



どうなってんの、って慌てて掛けられたやけに手触りのいい毛布をたぐりよせて、しゃべる狼に顔を向けたのにそこにはもうおらず、パタンとドアがしまったことだけがわかった。
< 11 / 60 >

この作品をシェア

pagetop