The Tricks Played by Destiny

「ったく、何もねぇ部屋でお前は何に腰抜かすんだよ。間抜けだろ、間抜け」

「なっ、なんで……」



敵意を見せて全身で威嚇していたというのに、奴には効かない。
それどころかあの大きな狼にしか話してないことを知ってるの。
驚きに満ちた目で見つめても何も言ってくれない。フンッと馬鹿にした眼で見下ろすだけ。


馬鹿にしたそれは更に拍車をかけた。……あたしのお腹が鳴ったから。
ぎゅるる、とそれはもう盛大に。


考えてみれば奴の屋敷から抜け出したのは夜明け前。前日の夕食は奴のお遊びに反抗しちゃって、食べられなかった。それに奴の屋敷に行ってからというもの、まともに食事を取っていない。
そして、今はもう陽は沈むばかりの時間になってる。


恥ずかしさと悔しさでごちゃまぜのあたしを馬鹿にした目で見下すと鼻を鳴らした。そして何も言わずに腰を屈めて軽々とあたしを持ち上げる。

急転する視界。お腹が空いたのも相俟ってか、ぐるりと世界が回ってる。くらくらする。