The Tricks Played by Destiny
奴がどんな顔をしてるかなんて、知りたくもない。
どうせまた、嫌悪感を隠さずに見ているに違いない。敵に助けられたのは不本意だが、それはそれ。
ふらつきが治まるまで、あてにした。

目をつぶって、感覚を研ぎ澄ます。
ぐらぐらと脳内でも回っている、気持ち悪い……。
それでもどうにか持ち直すと、深く息を吸って大きく吐き出した。



「もういいだろ」



つんけんどんに言い放たれた言葉とともに、両肩を掴まれてあたしは支えにしていた奴から離された。
ふらつきから解放されて、顔を見上げたらそこにはやっぱり馬鹿にしたような顔しかなかった。



「何やってんだか」



それは当然あたし自身思ったから苦笑いで返すしかない。笑ってごまかせ、と両肩に乗った奴の手を叩き落とした。

だからまた、更に強い眼で睨まれたのだけど。


その目から逃げるためにも辺りの様子を見渡した。座っているのはどうやら椅子らしく、食事が取れるようなテーブルに、キッチンが見えた。
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