The Tricks Played by Destiny
いつまでへたり込んでいたんだろう。地面を通してしか聞こえなかった馬蹄音が、いつのまにか直接耳に届いている。


草や枝を掻き分ける音が真後ろから聞こえ振り返ったとき、5騎の私兵はちょうど手綱を引いて馬を止めるところだった。


先頭にいる、いかにも偉そうな男はあたしにも見覚えがある。一人だけ違う制服を纏っていることから、あの男がこの小隊長なんだろう。


どうどう、と走り通して息の荒い馬を宥め、あたしから視線を外さないまま、あの男はくいっと首を動かした。

その合図で4人は馬から降り、腰に帯剣している柄を握ってあたしを囲うように狭めてきた。


後ろには川はあった。
けれど、谷底深くに。


川の向こうは5M程度離れている。間にはぽっかりとあいた谷。

どうしようもなかった。
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