The Tricks Played by Destiny
全身がたたき付けられる。
ぎゅっと内臓に圧迫がかかって苦しくなる。
深くまで沈んだのがわかった。あたしは水面に浮かぶために全身をばたつかせる。


シンプルなドレスと言っても水を吸ってしまったら重く、身体に纏わり付いて、特に足を動かすのに苦労した。
限界まで走り続け、体力を大幅に削られていたあたしにとって、水を掻くその一振り一振りが命懸けで、体力を消耗する。


やっとのことで水面に顔を出し、岸辺に向かった。あたしが来た方とは逆の、川を挟んで向こう側。


大量の水を滴らせながらその大地に立ったとき、あたしは力尽きてしまった。
もう、立てるとは思わなかった。視野が徐々に狭まり真っ暗闇になる。

少しだけ眠ろう。
少しだけ、と自分に強く言い聞かせてあたしは意識を手放した。
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