The Tricks Played by Destiny
パチパチと火の粉が爆ぜる音がして意識が戻ってくる。全身に暖かい熱が伝わり、じわじわと汗が吹き出そうな。

熱さに耐え切れず、少しでも離れようと寝返りをうったらぽふっ、と柔らかく、それでいてくすぐったいものに手が触れる。けれどとても手触りがよくて抱きしめたくなる。本能に従って腕を伸ばして引き寄せたけれど抱きしめるのは叶わなかった。

遠ざかったのか、腕を伸ばして探してみてももうその手触りの良さに触れることはなかった。

諦めてまたゆらゆら揺れる夢の中にいい気持ちで引きづり込まれていったというのに。
あたしの思考が一旦途切れて、全身に嫌悪感が走った。


見慣れた部屋とゲス野郎のにんまりとした嫌らしい笑みがあたしの頭を占めた。
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