The Tricks Played by Destiny
にんまりとした顔して何事かを話す。何を言っているのか分からなかったけれど、唐突に理解が訪れる。

――逃げられると思っているのか、リズ

寒気でぶるりと身体が震えたのが分かった。
そして、その後に告げられた言葉はしっかりとあたしの鼓膜を震わせ、全神経を逆撫でした。

――俺に売られたのだ、お前は。玩具として。



「あたしはお前の玩具じゃないっ!!」



あたしだって人間だっ。

声を荒げて、飛び起きた。
汗をかいていた。びっしょりと、息も上がって、あたしは嫌な思考を振り払うために頭を乱暴に振った。眩暈を起こすほどに。

そして、目を開ければいつもの光景、ではなかった。


そうだった、あたしは追っ手を振り切って逃げ切れたのだ。
あの、悔しそうな4人の表情を思い出す。



ここは、暖もとれるし何より生活できる空間だった。
そして目の前には、……



「犬?」

「狼じゃぼけぇ」



丸まって、寝ていたあたしのそばにいたらしい。
背中を丸め、後ろ脚に頭を載せた状態から頭を上げ、あたしの様子を見ていた。
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