オタクが転生した結果

転生者達

20XX年6月、梅雨の晴れ間に真夏日を記録したある日の事、某県某所にあるイベント会場で、その不幸な大事故は起こってしまった。

作家の作家による作家の為の、年に一度の大イベント。

病気で一昨年から不参加となっていた地元出身の人気作家が、待望の新作と共に凱旋復活を果たし、会場は異様なまでの盛り上がりをみせていた。

事故防止の為に入場制限されていたはずが、開始早々、その作家のブースに多くの人が殺到する。

主催者側の配慮で壁際に十分なスペースを確保してあったにも関わらず、その予想を遥かに上回る人数が集まったのだ。

本来ならルールを遵守し、長時間列に並ぶのも厭わない人々の集まりである。

だがしかし、そこに集まったファン達は思った。

『病をおして私達の為に創作活動を再開させ、イベントに参加してくれた作家様。なんか顔色が悪い気がする、、また倒れたりしたら大変、次回不参加とかマジありえんから!』

とは言え、作家様とお話したいしプレゼントも渡したい、グッズだって絶対に欲しいから、この列から抜ける事はできない。でも、作家様の負荷は少しでも減らしたい。早くこの長蛇の列が解消されればいいのに、、

そんな想いが、列に並ぶ人々の隙間を少しずつ埋めていく。

いつしかその長蛇の列は、普段では考えられない程の密度となり、そうでなくとも熱気に溢れたイベント会場は、その1区画だけ、より過酷な状態となってしまう。

すし詰め状態のまま、気温と湿度が上昇し、どんなに辛くても列から抜ける事はできない。

その列に並ぶ人の中には自らも創作活動を行い、この日の為に寝食を惜しんで参加している者もいた。アドレナリンの分泌によりギリギリの状態を保っていた彼女達に、この過酷な状況を乗り越える体力が残っているはずもなく、、

ひとり、ふたり、と熱中症を起こして倒れる者が現れ、、

その衝撃でバランスを保てなくなった長蛇の列が、将棋倒しとなってしまったのだ。

主催者側の配慮で、壁際でも更にスペースを確保しやすい出入口から離れた場所だった事も、今回に限っては不運となる。

パニック状態となった会場内での救助は難航を極め、結果、多数の犠牲者を出す事となってしまった。
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