オタクが転生した結果
マルゲリットの巧みな誘導により、令嬢達はクリスティーヌの私室へと場所を移した。

「クロエ、紹介致しますわね。今日お友達になって下さったマルゲリット様、エメリーヌ様、ジゼル様ですわ~」

マ「クロエさん、はじめまして。クリスティーヌ様から、あなたが随分と流行に詳しいとお伺いしたわ。私達も流行には興味があるの。是非お話を聞かせて頂けるかしら?」

クロエは震えていた。優しい口調で話す笑顔のマルゲリットの目が一切笑っていないのが恐過ぎる。そしてエメリーヌとジゼルは、とても令嬢とは思えないヤクザかチンピラのような表情でクロエを睨み続けていた。当然クリスティーヌは、そんな彼女達の様子に気付く事はない。

クロエは一瞬で全てを悟った。

(この3人、転生者だ。ヤバイ、絶対怒ってるじゃん。やっぱニャロメ様はまずかったかー)

マ「そう言えば、クリスティーヌ様はいとこのアンドレにはもうお会いになりました?」

突然マルゲリットがクリスティーヌに話を振る。もちろん足止めの為である。こんな時、ガバガバ設定は都合が良い。

マ(ここは任せて頂戴。後の事はよろしく)

エ・ジ((り))

エ「クロエさん、私達ドレスを見たいわ。許可は貰ってるから、衣装部屋に案内してもらえるかしら?」

ここが元の世界なら、クロエが今から連れて行かれるのは、体育館裏で間違いないだろう。

中途半端な仕事をした自分が悪いのだ、、クロエは覚悟を決めて2人を衣装部屋へ案内する。

(あーこんな事なら、男爵令嬢に転生しとけば良かったなー)

後悔先に立たずである。

ジ「で?クロエは転生者なんだよね?」

衣装部屋に入るなり2人の令嬢に壁ドンされたクロエは、ジゼルの質問に頷いた。手下ポジとは言えサブの悪役令嬢であるエメリーヌとジゼルは美し過ぎる顔立ちで、こんな状況でなければ眼福の極みであっただろう。

エ「あれはないわ。酷過ぎる。一体何を思って重要人物をニャロメ様に仕上げちゃった訳?」

ジ「ニャロメ様でどうやってヒロイン虐めるつもりなの?マジあり得ないから」

エ「もう王子には会っちゃったんだよね?まったくもう!どうすんのよ!」

ジ「とにかくニャロメ様要素は全撤去で!早く軌道修正しなくちゃまずいよねー」

エ「あんたはクリスティーヌ様を美しくする事だけ考えてなさい。おかしくなるから、余計な事はしないでね!」

ジ「そうそう、悪役令嬢関連は私達で何とかするから、クロエはノータッチでヨロ」

エ「次、ドレス作る時は連絡しなさいね?悪役令嬢に相応しいドレスを選ばないと。メイクも教えてあげるから、あんたは言われた通りに動けばいいわ」

クロエはニャロメ様と共に戦力外通告を受けた。こうして、クリスティーヌ悪役令嬢化計画の駒が、次のステージへと進んだ。
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