オタクが転生した結果

クリスティーヌ沼

「クリスティーヌ、待っていたよ」

「テオドリック様、ご機嫌麗しゅうございます」

「ああ、クリスティーヌ、そんな堅苦しい挨拶はやめてくれと、何度もお願いしてるじゃないか、、」

「ですが、、」

「まあいい、クリスティーヌの為にお菓子を用意しておいたんだ。さあ、こちらに来て、一緒に食べよう」

テオドリックは、隣に座るクリスティーヌを眺めながら、幸せを噛み締めていた。

(クリスティーヌが可愛過ぎる、まるで天使だな、ずっと眺めていたい)

巷で美し過ぎる公爵令嬢として名高いクリスティーヌが、実は可愛い天使のような女の子である事を、テオドリックは知っていた。

5年前、初めての顔合わせではどうなる事かと思われたクリスティーヌだったが、その後間もなく、見ためと言動が改善された。それと同時に、意味不明ながらもハキハキと話す印象だったクリスティーヌの口数が減ってしまう。

王妃教育で矯正されてしまったのか?それとも勉強が大変過ぎてつらいのか?心配になったテオドリックが本人に尋ねると、何とも可愛らしい答えが返ってきた。

「わたくし、話し方がおかしいと、お友達に言われましたの。今は練習中ですの。正しく話せるようになるまでは、恥ずかしいから、あまりお話したくないのです、、わ」

「話し方がおかしくても私は気にしないよ?無理にとは言わないけど、私といる間だけでも、クリスティーヌが楽しくお話してくれたら嬉しいな」

テオドリックがそう言うと、クリスティーヌは目をキラキラさせて話し始めた。

「テオドリック様は、とてもお優しい、の?です、わね?あれ?」

「大丈夫だよ、続けて?」

「はい!わたくし、テオドリック様の妃として、恥ずかしくないように、頑張ります、、わ」

口元に手を添えたいのを我慢しているのだろう。クリスティーヌの左手が必死で右手を押さえている。その様子があまりにも可愛いくて、テオドリックは思わず笑みをこぼした。

「そう言えば、ドレスの雰囲気も変わったね?もしかして、それもお友達におかしいって言われたの?」

「いいえ、違います、わ。このドレスは、お友達が一緒に選んでくれましたの。今日はテオドリック様にお会いするから、一番可愛いと褒めて貰った、お気に入りを着て来たのです、、わあじゃなくて、着て来ました、、の?よ?」

再び手に力を込めるクリスティーヌは、やはり可愛い。テオドリックが顔を綻ばせる。

「そっか、優しいお友達なんだね」

「はい!大好きなお友達なんです、の!」

(クリスティーヌは随分素直で可愛らしい。婚約者がこの子で良かった)

この日、テオドリックはクリスティーヌへの恋心が芽生えた事を自覚した。そして今では、結婚する日を指折り数えて待っている。

(ああ、可愛い。早く結婚したい。毎日眺めたい)

テオドリックはクリスティーヌ沼にどっぷりと嵌まっていた。
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