23時のミャーの大冒険
「は?めちゃくちゃ可愛いだろうが。赤にピンク色のリボンの刺繍、さらには銀製の鈴までついてるイタリア製レザーの特注品だぞっ」

美弥が掌をグーにしてポンと叩いた。

「ね、颯。男の子なのに、ピンクのリボンが嫌だったんじゃない?!颯だってピンクのリボン柄のネクタイ嫌でしょ?」

「おい、当たり前だろうが、何でこの俺がピンクのネクタイ締めんだよっ、恥ずかしすぎんだろっ」

美弥が目を丸くすると、俺のピンクネクタイ姿を想像したのか、クスッと笑った。

「颯、どう見てもピンクって感じじゃないもんね、どっちかと言えばヒョウ柄」

「うるせぇよ」

「あはは」

そして美弥はまた笑ったかとおもえばすぐに眉を下げ、窓の外を見ながらため息を吐き出した。

「ミャー、早く鈴鳴らして帰って来ないかな……」

(ん?鈴……?)

俺は、美弥の言葉にあることを思い出して口角を上げた。

「な、ミャーがこの家出て行ったのって何時?」

ティッシュで涙をふくと、くるくる丸めながら美弥が俺を見上げた。

「颯が帰ってくる少し前だから……23時くらいかな?」 

「23時ねー、いまから30分ほど前か、じゃあそんな遠くには行ってない筈だよな」

「うん……」

「明日水曜日だしな、美弥上着着ろ。今からいくぞ」

「え?どこに?」

「決まってんじゃん、ミャー追いかけんだよ」

俺はニンマリ笑うとスマホに『あなたの猫ちゃんみまもり隊』のアプリを浮かべた。
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