キミと放送室。
4
「日高さん。持ってきたよ」
有島くんがCDを持ってきたのは、それから1週間くらい経った頃だった。
「CD?」
「そそ。」
どこかの本屋のビニールの袋に入ったCDは、どうやら自分で選曲したプレイリストになっているようで、手書きで曲名がずらりと書かれていた。
有島くんらしい、丁寧な字だ。
「すごいね!どういう選曲?」
「んー、好きな曲詰め込んだだけだよ」
「そうなんだ。早速、今日のお昼休み流すね」
「よろしく。時間あったら歌詞…」
有島くんが言いかけたとき廊下から「有島ー!教科書貸してー」と、隣のクラスの男子が大きな声をこちらに向けた。
2日に1回は借りに来ている気がする。
「またか。悪い、日高さん。じゃあ、CDよろしくな」
教室を出ていく有島くんの背中を眺めていると、
「やっぱりあやしい」
「わっ」
いつの間にか近くにいた紗良と千春が私の机を取り囲んだ。
「びっくりした…」
言いながら私は慌ててCDを鞄にしまった。
「私の睨んだ通りだよ。有島と栞ちゃん。最近いい感じ」
「それならそれで良いじゃん。恋愛は自由だよ」と、隣で大人びた発言をする千春。
「えー。でも栞ちゃん何も言ってくれないし、有島は女泣かせな気がするし」
「紗良、本当にそんなんじゃないよ」
うそじゃない。有島くんは憧れているけど、恋しているのかと聞かれたらそれはわからない。
「ほら。アンタはズカズカ入り込みすぎなの。栞には栞のペースがあるんだから。はい行くよ」
「えー」
「じゃあね栞」
「うん、またね」
まだまだ話し足りないらしい紗良の腕を引き、自分の席に戻っていく千春。
自分のことをあまり話さない私を尊重してくれる千春は、3人の中で一番大人な気がする。
それに甘えて壁を作っている私は、一番子どもなのかもしれない。