キミと放送室。
こんなシチュエーションで食べるお弁当は、いつもより味が薄く感じた。
「あの…」
お昼休みもあと10分。
そろそろ鍵を閉めて職員室に返却しなければならない。
スタジオの入り口から恐る恐る声を掛けてみたものの反応が無い。
私は大きく息を吸い込んで、「あの!!!」と
力いっぱい叫んだ。
「びっ…」
男子生徒はガタンっとソファから落ちかけて目を覚ました。
「そろそろ出たいんですけど」
「?どーぞ」
「鍵をかけないと」
「あー」
「お昼休み終わりますよ」
「んー」
男子生徒は会話にならない相槌を繰り返し、眠たそうにあくびをしながらスタジオから出てきた。
「CDは?」
そう聞かれて、さっき機械から取り出したCDを差し出した。
彼は私からCDを受け取ると、しゃがみ込んで元の場所に戻してくれた。
「めだか?」
「はい?」
「これ」
彼が指差したのは、私の上履きだ。
たしかに、マジックで書いた“日高”という苗字がつぶれて“目高”に見えた。
「ふ。変な名前」
わざとなのか、無邪気に言ってるのかよく分からない。
「ひ、だ、か、です!」
放送委員初日は、こんな感じで終わった。