キミと放送室。
「日高さん。そういえば、あのCD聞いてくれた?」
隣に座っていた有島くんが、私たちの空気を察してなのかそう話を振った。
葉山先輩と紗良は2人だけの世界になっている。
「CD?…あーっ、」
忘れてた。
歌詞がオススメと言われていたけれど、放送室でBGMとして流しながら聞けば良いかなと思って、まだじっくり歌詞まで聞いていなかった。
「今日、帰ったら聞く…つもりで…」
有島くんにそう返事をしながらも、CDの存在を知っている名波先輩の視線が気になってしりすぼみな言い方になってしまった。
もういやだ。帰りたい。
「俺のオススメは1番目の曲と…」
有島くんが隣で一生懸命話しかけてくれているけど、全然頭に入ってこなくて愛想笑いしか出てこない。
そのとき、「おかわり」と名波先輩がコップを持って席を立った。
私は歩いていく名波先輩の背中を見届けて、「私もっ、」と残っていたオレンジジュースを一気に飲み干した。