キミと放送室。
「おかえりー、栞ちゃん」
教室に戻るなり出迎えてくれたのは、1年から同じクラスで仲良くしている紗良だ。
長くて粟色の真っ直ぐな髪に、大きな瞳が特徴的な子。多分、学年で1番可愛いんじゃないかな。
「ただいま」
「おかえり栞!音楽ばっちり聞こえたよ。どうだったー?放送室」
続いて声を掛けてきたショートヘアで小麦色の肌がトレードマークの千春。
千春も1年のときから同じクラスで、普段はこの3人で行動することが多い。
「あー…物置き、みたいだったかな」
知らない男子が居たなんて言ったら面倒な事になりそうなので適当にはぐらかした。
「そうなんだぁ」
紗良が私の手を引いて席まで連れて行く。
「聞いてよ栞ちゃん、千春ちゃんてば、また購買言って男子とケンカしてたんだよー」
「えー?また?」
千春は陸上部に所属しており、先輩や他のクラスに友達が多く、教室の外に出ると誰かしらに絡まれてはふざけ合ったりしている。
「だってアイツら私のハッシュ奪ってくるから。絶対確信犯だ」
「もー、こわいからやめてよね」
そう言って紗良がプクっと頬を膨らました。
彼女は自然とこういう仕草が出るタイプだ。
「アンタもそれやめな」
それを見た千春が眉間に皺を寄せて、ギュッと紗良の頬を挟んだ。
「ひどーい」
私はそんな2人のやり取りを見て笑った。
3人で居るのは楽しいけど。
特別可愛くもない、部活もやってない私は、なんだかとてもつまらない人間に思えて、少しだけ憂鬱な気分になる時がある。