キミと放送室。
10
「栞ちゃーーーーん」
月曜日の朝。
下駄箱で上履きに履き替えていると、遠くから紗良が私を呼ぶ声が聞こえた。
「紗良、おはよ」
「おはよ、じゃないよ栞ちゃん」
私を見て走ってきたらしい紗良の前髪は風になびいて変な形になっている。
いつも身だしなみ完璧なのに。
キョロキョロと周りを確認したかと思うと、「こっち来て」と私の手を引いて中庭へと向かった。
聞かれることは大体予想がつく。
「栞ちゃん。名波先輩とどういう関係??」
やっぱり。
「えーっと、…顔見知りっていうか」
「うそだ。ただの顔見知りがあんな風にケンカしないよ」
食い下がる紗良に、
放送室での事を話してしまおうか迷っていたら3階の廊下の窓からこっちに手を振っている千春が見えた。
「栞ー!紗良ー!おーはーよー!」
私が小さく手を振り返すと、紗良がとなりで「もお、千春ちゃん声が大きいんだから」と頬を膨らませた。
「とにかく栞ちゃん。この続きも、有島とあの後どうなったのかも、放課後話そう」
紗良はそう言うと千春に大きく手を振り返した。