キミと放送室。
教室に入る前に、扉のはめ込み窓から中を確認すると、有島くんはまだ来てない。
私が少しホッとして扉に手をかけたとき、「おはよう、日高さん」と肩を叩かれた。
「ひっ…」
思わず変な声が出た。
振り向くと有島くんがいて、
「お、おはよ、有島、くん」
カタコトだし、目も合わせられない。
そんな私を見た有島くんは、
「ハハ…そりゃそうか」
と言って困ったように頭を掻いた。
「えっとー…俺、勢いで言っちゃったけど、その、今すぐに答えがほしいとかそんなんじゃないから。だから、いつも通り、普通に。…ね?」
きっと、勇気を出して伝えてくれた。
私よりずっと、顔を合わせるのも緊張したはず。
だから、私が逃げたりしたらだめだ。
「…うん、分かった」
ひきつってるかもしれないし、不自然かもだけど。
今できる精一杯の笑顔でそう答えた。