キミと放送室。






「あの…この前は、ごめんなさい」


放送室に入ると、先に入った葉山先輩の背中に深々と頭を下げた。


「私、雰囲気悪くしちゃって…」



「全然!気にしなくて良いよ!悪いのアイツでしょ多分。いや、絶対そう。デリカシー無いからね」


葉山先輩はスタジオエリアに入るといつも名波先輩が座っているソファに腰掛けた。



「バンドもさ、一時期は辞めるかもって言うからずっと止めてたんだよね」


「そうなんですか?」


「うん。でも何でか最近ずっと楽しそうでさ。その理由がやっと分かった」


そう言うと、葉山先輩は立てかけてあるアコースティックギターを親指で指差した。


「弾いてんでしょ?昼休み、ここで」



私は、葉山先輩がどこまで何を知っているのか分からなくて、何て言おうか考えたけれど、もうコソコソ隠すのはやめた。


「…はい。」


「はっはー!やっぱり。栞ちゃんはうちのバンドの救世主だ」


「いや、私は何も…名波先輩の気まぐれじゃないですか?それに、ギターできないフリして練習するって、どうなんですかね」


「ん?」


「弾けるのに、ヘタクソな私のギター見て面白がってたのかなって」

「弾けるって、航が?」

「はい」

「まさか。ライブの時は持たせてたけど、弾けない弾けない。真冬は寒いからって軍手してギター握る男だよ、アイツ」

「え?」

「もしかして、それでこの前ファミレスでケンカしてたの?」


葉山先輩が笑いを堪えるようにそう言った。

私は呆然と立ち尽くしたまま、記憶をたどった。









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