キミと放送室。
11
たどり着いのは、先日のライブハウス。
地下1階が貸しスタジオになっていて、名波先輩はそこで練習していると葉山先輩が教えてくれた。
薄暗い階段を降りると、茶色の扉が1枚あってゆっくり開ける。
顔だけ覗かせて中を確認すると、更に奥に3つの扉があってS1〜S3までのプレートが貼ってあった。
私は中に入り、聞いていた通りS1の扉をノックする。
が、何の反応もない。
ゆっくり扉を開けるけれど、中は照明こそついているものの、名波先輩の姿はなくシーンとしていた。
ガラス張りのレコーディングルームの中央にはエレキギターが立ててある。
ライブの時に名波先輩が持っていた物だろうか。
私は忍び足でギターの目の前まで来ると、まじまじと観察した。
「また勝手に弾く気?」
「っ!」
驚いて背筋を伸ばした私。
振り返ると、いつかと同じようにパーカーの襟元で鼻まで隠した名波先輩が立っていた。表情は、わからない。