キミと放送室。
レコーディングルームの扉にもたれかかるようにして立つ先輩。
「えっと、」
「放送委員サボったらダメじゃん」
「な、名波先輩こそ」
「俺は放送委員じゃないから」
「なにそれ、ズルくないですか…」
そんな会話をしたら、名波先輩はフッと笑った。
沈黙が、長く感じる。
「まだ怒ってんの?」
私はブンブンと顔を横に振った。
「なんで、バンドやってること隠してたんですか?」
「…言ったらメダカがギターの練習やんなくなると思った」
「べつに、私がギターやらなくても問題ないじゃないですか」
いつの間にか目の前にいた名波先輩を見上げる。
パーカーのフードを被っているからか、いつもと雰囲気が違って見える。
「問題あるだろ。せっかく見つけた楽しいと思えることは簡単に手放すな」
ギターの練習は確かに楽しい。
短い時間がちょっと物足りなく感じて、だからこそ次回が楽しみだと思った。
でも、本当はそれだけじゃなかった。
「って、カッコつけたけど。
ギター楽しそうにやるメダカ見てたら、俺も楽しかったから。
俺がメダカとの練習続けたかっただけ」
私の肩に額を預けた名波先輩。
「あとは…ギター弾けないのにバンドやってんの、だせぇし」