キミと放送室。
「栞ちゃん、有島と朝何の話ししてたのー?」
3限目が終わって、次の化学の授業のために理科室へ向かう途中、紗良が楽しそうに聞いてきた。
「有島?そっか、席替えしてから栞と隣の席だもんね」
千春が思い出したようにそう言った。
紗良はワクワクと期待の眼差しで私の答えを待っている様子だ。
「べ、別に大した話はしてないよ」
何となく知られたくなくてそう答えた。
「えーほんとー?内緒話してたのにー」
紗良がつまらなさそうに口を尖らせたのを見て「面白がるんじゃない」と千春がつっこむ。
私は愛想笑いをして少し早歩きで歩いた。
放送委員に入ったのは、お昼休みは1人で過ごしたいと思ったからだ。
2人のことは好きだけど、やっぱりどこか劣等感を感じているのかもしれない。
私が有島くんに憧れていることも、2人は知らない。
「もうすぐチャイム鳴るよ、早く行こ」
私は2人にそう言って小走りで理科室へ向かった。
「本当だ、やば」
千春は全速力で走り出し、紗良は「バイバーイ」と呑気に手を振った。