僕のお嬢
「そーだねー、誰かさんのおかげで男も寄ってこないねー」

棒読みで隣からツッコむあたし。

「あら。私に恐れをなして尻尾巻く男なんて、漢じゃないわよ」

「この世に都筑さんを突破できるヤツ、いるんスかね・・・」

聞こえてるよ新太。

あたしの正体知らない相手とデートして、これならイケるかなーって期待してお店出たら、都筑が待ち構えてるんだからね。化け物でも見たように驚かれて、たいがい向こうからの連絡が二度と来なくなる。

まあ焦ってもないし、ご縁があるまで気長に待ってて、おじいちゃん達。心の中で明るく。

霊園を出て、昼ご飯は道すがらの食堂に寄った。

おじいちゃんは昔気質(かたぎ)で、ファミレスを知らずにあの世に行った。壁に脂の染みた手書きのメニューが貼ってあるような、小っちゃい店によく連れてかれた。

「あたしはカツ丼」

おじいちゃんは決まってそれしか注文してくれなかった。懐かしい思い出だ。

「じゃあ、カツ丼三つ」

都筑がさくっとオーダーする。

お墓参りのたびにカツ丼食べさせられた、って、新太にも笑い話になるよ。いつかきっと。
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