僕のお嬢
余計な世話だと突き放されて思い出した。若頭のクセして、スタンドプレーが過ぎる狂犬だった。でも慕われてた。優しくないけど面倒見は悪くなかった。そういう男だった。

「・・・あんたに首輪つけるご主人は、もういないってわけ?」

「さあねぇ」

「再会が塀の中じゃなかっただけマシだけどね」

「小暮を()ってかー?んなカンタンに地獄に逃がすつもりはねーよ」

ひときわ長く白い息を吐き出した佐瀬は、吸い殻を足許に放りサンダルの底で火を踏み消す。

深町組を解散に追い込んだのは、同じ六道会の小暮組。切れ者だって噂の跡取り息子が仕組んだ。佐瀬は確信してる。黙って消えたのも、独りで報復する気なんじゃないかって。極道絡みのニュースを目にするたび気を揉んでた。

「殺るのは勝手だけど、お嬢の顔に泥塗るようなマネは赦さないわよ・・・?」

都筑が低く凄んだのを久々に聞く。

「茜に言われたくねぇな。貴子をいつまで、ガキの極道ゴッコに付き合わせてンじゃねーぞ?」

あ。

と思った時には遅い。佐瀬が思いっきり地雷を蹴飛ばした。

知ってる。あんたはときどき力尽くで他人の気持ちを踏み荒らす。でもそれは誰かの為だったりするんだよ、いつだって。
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