僕のお嬢
「・・・・・・ゴッコじゃないからご心配なく」

「なら、マジメにお嬢担いで深町組を復活させるってか。貴子が頼むかねぇ」

にべもない佐瀬に、凍った眼差しをすがめた都筑。なんなら日傘が欲しいくらいの天気なのに、暑さが霞んでる。漂う氷点下の冷気に。

「先代と約束してるのよ、お嬢の居場所を必ず守るって。奪られたら奪り返す、当たり前でしょ」

おじいちゃんと約束。してそうだよねぇ。自分が死んだら身寄りもない孫娘が不憫だったんだよねぇ、おじいちゃん。

「どーせなら真っ当な場所を作ってやりゃ済むって言ってンだよ、バーカ」

「出来るなら最初っからそうしてる・・・ッッ」

呻った都筑が佐瀬の胸ぐらを掴んだ。あんまり動きが速くて止める間もない。驚くヒマすらない。

「ちょ、やめっ」

「都筑さんから離れねーと殺すぞオッサン」

見当違いな脅し文句が背中で聞こえた時には、新太が片手で握った短銃を佐瀬のこめかみに突き付けてた。

「茜に言えよ」

「アレ?カシラが生きてる」

「あー・・・面倒くせーのが増えた」

佐瀬の心底うんざりしたひと言が、足許の砂利に転がる。

思わず声を上げて笑った。懐かしかった。昔のまんまの佐瀬がいたから、やっぱり嬉しかった。
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