僕のお嬢
戻って、お墓参りをやり直し。佐瀬が供えた花も活け、お義父さんに手を合わせる。会合の帰り、対向車線からはみ出したダンプと正面衝突して帰らぬ人になった。戸籍は他人でも父親と呼べるのはこの人だけ。

佐瀬はあの事故が小暮の仕業だと疑わなかった。何も守れなかったのを一番後悔したのは誰か、あたしは知ってる。プライドの高い男だから黙って姿を消したんだってことも。

「佐瀬はそっちに行くのまだ早いからね、お義父さん!」

「あれは殺しても死なないわよ。お人好しね、うっかり惚れ直しちゃった?」

「そんなんじゃないよ」

小さく吹き出す。

「不良のお兄ちゃんを見守る妹の気分?昔の女ヅラする気もないから全然」

ものすごいイケメンてわけじゃないけど、目鼻立ちのパーツが整ってて、ちょっと浅黒で。いつでも億劫そうで、到底オンナにマメでもないのに、気付くと溺れてる。息継ぎも忘れるくらい。

あたしはお嬢だから別格だった。今も自惚れてる。根っこはずっと繋がってる、手の届く場所で一緒に生きられなくたって。

「たださ。最後に佐瀬の骨を拾うのはあたしがいいって、思っただけ」

しょうがないとでも言いたげに、都筑は困ったように笑んだ。

便りはなくてもきっとまた、煙草の吸いさしを残しに来る。

「よし、帰るよー新太」

「うーっす」

今日は、いいお墓参り日和だ!



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