僕のお嬢
あたし、深町(ふかまち)貴子(たかこ)２７歳。今はただの平凡なアラサーOL。結婚も、老後も考えてない成り行き人生を迷走中。

毎日、都筑が作った朝ご飯を食べて、昼は都筑が作ったお弁当を会社で食べて、都筑が作った晩御飯を食べて。仕事の愚痴をぶちまけて、マッサージしてもらって、お風呂に入って寝る。

休みは買い物も映画も付き合わせるし、なんなら旅行も行く。気の置けない同居人で用心棒で、未だにあたしをお嬢呼ばわりで。

おじいちゃんの命だった深町組はとっくに畳んだ。広かった家も売って、組のみんなに餞別渡して。誰がどこでどう暮らしてるのか噂を聞くこともあるし、丸っきり消息不明になった人間もいる。

べつに面倒みてくれとも言ってないのに、都筑が世話を焼いてくれてもう三年？四年？　わりとおじいちゃん子だった、独りぼっちのあたしを放っとけない。律儀。

極道ヤメたって、おじいちゃんも、跡目継いでくれた八島(やしま)のお義父さんも、墓の下から文句なんか言わないけどね。あたしに黙ってどっかの組に出入りしてるらしい。都筑の弟分の新太(あらた)が、こっそり教えてくれた。

あのビジュアルじゃ悪目立ちするだけだろーに。危ないマネするなって言っても笑ってはぐらかすし、親の心子知らず。

あたしの気持ち知らず。
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