僕のお嬢
「来週会って正式にお返事しまーす」

「里沙がいーならいいけど結婚だよ?」

あたしはもちもちチーズコロッケを口に放り込み、ちょっと真顔で。

「んー顔も性格もフツウそうだし、四つ上で山歩きが趣味?あんまり束縛されたくないらしくて、それならそれでラクそうかなーって」

なるほどお互い干渉しすぎない関係かぁ。どっかのCMのフレーズを思い出した。

「ソコに愛はなくていーんかい?」

「相性合えば平気かも?」

わりとドライなとこもあって、少なくても冷静な計算と判断はできてそうに見えた。そもそも里沙の人生だから反対も賛成もない。

「そっか。ヘンなヤツだったら言いなよ?都筑に言って、いつでも潰すからね」

「ありがと、マチコちゃん~」

前にも、里沙のストーカーになりかけた変態の撃退に難なく成功。言っちゃなんだけど、警察なんかよりよっぽど役に立つ。

「でね、もういっこマチコちゃんにお願いがあるの~」

「なんでも言ってごらんー」

「明日、アラタ君とデートしたいんだぁ」

ふにゃふにゃした満面の笑顔に思わず箸が止まった。

理由を訊こうとして、訊かなくても分かってる自分がいる。今までさんざん、新太には惚れるなって耳タコで取り合ってこなかった。里沙も聞き分けてくれてた。

「いっこ訊くよ? 新太はダメだってあたしが言ってるから、ヤケクソでその山男と結婚すんの?」
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