僕のお嬢
自分に気のある女に気付かない新太じゃない。あたしが『手を出すな』と釘を刺し続けたのを破らなかったのは、文句ナシで褒めてやりたい。

「だからさ。スッパリ終わらせてやってよ、あんたが」

ありのまま伝え、黙って聞いてた新太は『・・・お嬢の頼みなら断れないっすね』と笑んだ気配を滲ませて。

「里沙を泣かせてもいいけど、傷にしたら赦さないからね」

『ヤだなぁ、もっとオレを買いかぶってくださいよー』

「そんなセリフ、百万年早いわよ」

いきなり耳許で自分じゃない声がして、もう少しでスマホを落っことすとこだった。

『アレ?都筑さん??』

「何だかよく知らないけど、腐った真似したら表を歩けなくなると思いなさい?」

問答無用で脅してあたしの手からスマホを抜き取り、勝手に通話を切った長い指。振り仰げば、化粧が綺麗に乗ったおにーさんがニッコリ笑ってる。いつの間に湧いた?!

「仕事が早く片付いたから、女子会に混ぜてもらおうと思って」

飛び入り参加者を連れて戻ると里沙が大喜びした。

「アカネさんと飲むの久しぶり~」

「あら、相変わらずカワイイこと言うわね」

都筑がメニューを覗き込んでる隙に、指で輪っかを作り里沙にOKのサインを送る。

ホッとしたような、どこか泣き出しそうな、ふやけ笑いが返って、あたしの胸にちょっとだけ染みた。
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