僕のお嬢
里沙は、山男と結婚前提の慣らし運転的な付き合いを始め、式も一年後でもう決まってるらしい。話を聞いてても恋愛要素が薄くて、業務連絡されてる気になる。

新太との最後のデートは楽しかったって電話じゃ笑ってたから、たぶん泣いたんだろうけど知らんぷりした。

新太に会った時、髪をわしゃわしゃにしてやった。どうしようもない、似た痛みを知ってるから、あたしまで切なくてしょうがなかった。

『マチコちゃんは、このままアカネさんとずっと一緒?』

ふにゃふにゃした里沙は時々、狙ったように急所を突いてくる。

ずっとこのままがいい。それも本音。でもね。都筑の人生をすり潰してるのはあたしなんじゃないか・・・って考えることが増えた。

佐瀬は、都筑があたしを担いでるって責めたけど違うよ。あたしがひと言『お嬢をやめる』って言えば、黙って従うのが都筑なんだよ。

組を(おこ)すなんて口で言うほど簡単じゃない。何年かかっても叶わないかもしれない。叶うまで、都筑も新太もそばにいてくれる。独りになりたくないから、あたしはお嬢でいたいんじゃないかって。

あたしが一番ズルくて卑怯。だったのかもね。
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