僕のお嬢
とある夜だった。晩ご飯のあと、自分の部屋でゴロゴロしながらテレビ観てたら、都筑が隣りに正座してニッコリ笑って言う。

「明日からしばらく出張してくるわね」

「出張?」

「戻るまでお嬢の世話は新太に任せるから、使えなかったらゴミと一緒に捨てていいわ」

それはどーでもいいけどね。

「いつ帰ってくるわけ?」

「そうねぇ・・・早くて明明後日くらいかしら」

「遅くて?」

「そうねぇ、帰る前に電話くらいできるかしら」

コケティッシュに首を傾げてみせる都筑にあたしは、寝転んでたのをクッション抱えて座り直す。

「なんのお使い?」

口を割らないのは知ってて訊いた。

「別に説教する気はないよ、おじいちゃんに顔向けできるって言うんならね」

「・・・綺麗事だけじゃやっていけないのよ、色々と」

作り笑いに歪む、口紅を乗せた薄い唇。あんたのその顔、嫌い。

「だからって危ない橋渡って、戻ってくる保証は?あたしは?都筑までいなくなったら独りぼっちだよ?」

仮面の剥がれた無表情を見据えて、お腹の底からせり上がってくるものを、どうしてか止める気になんなかった。

「あたしのせい?そうだよね、あたしがさせてるんだよ、都筑の手ばっかり汚させて!」
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