僕のお嬢
実家暮らしの里沙を家の少し手前で降ろし、こっちに向かって手を振りながら玄関の中に消えたのを見届けて、車は滑り出す。

「リサちゃん、カワイイのに彼氏いないんすかねー」

着く間際に聞いた、会社の後輩に合コンに引っ張ってかれた話を思い出したのか、新太がしみじみ言う。

「そのうち親の紹介とかで、あっさり国際結婚するかもね」

里沙のお父さんは、海外展開もしてる某アパレルメーカーの重役さんで。娘をインターナショナルスクールに通わせたり、留学させたり。そもそも日本産の男にくれてやる気がなさそうな。

「うっかり手ぇ出したら、新太なんか北極の海に沈められるよ?」

「シロートには出しませんよー。そーゆーの、都筑さんメッチャ怖いんで!」

おおよそ社会のルールは守ってなくても、極道には極道のルールが存在する。嫌いじゃない、そういうのは。

「で?その、めっちゃ怖い都筑はなんの野暮用?」
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