都市夢ーとしむー
その6/暗黒の予感
日下は、あくまでかつては人間だった、浮遊するエネルギー体から、400年の時を経て”故郷”であったこっちの世界に降り立つことが叶った”彼女”の気持ちに立って考えてみた。
”リカは、こう考え着いたんじゃないか。単にこっちに居る滞在時間を長くする為に、若い女をもっともっとと食い漁ってていては、所詮イタチごっこで疲れる。それよりも、いっそ自分の思い通りに動かせる人間を使えば、エサの確保も効率よくできるし、人間の世界で自由にやれる土壌作りにもなると…。そこでリカは、こっちの世界での使用人をゲットしようとしている。いや、厳密にはもう、若い女がリカに魂を売って、人間を超えた力を得てる可能性が強い”
”今はなんとか、浅間さんがありったけの波動で、最低限のけん制をしてくれてるが、彼女の言ではもう牽制の用は足していないとな…。ただ、まだ波動を発する人間は残っているとのアピールはできていると。俺にはそれが今のリカが暴走することの歯止めになってる気がする。ならば、浅間ユイが生存している間に、他の人間で何か手を打っていかないと…”
まさしく、浅間ユイが弁護士である日下辰巳にしたためた長い手紙によって、彼女の必至な訴えを彼に届けることができた。
それは間違いなく…。
...
≪…一線を超えた逆神をこのまま見過ごせば、人間社会は混濁の波にのまれます。そんなこと、絶対阻止しないとならない。幸い、自分の好みに忠実なリカは、今のところ”活動範囲”が限定されています。ここを突きましょう。我々は、S区周辺に絞ってマークすべきです≫
≪そこで、逆神にまやかされた裏切者をあぶり出し、まだ人間のしがらみを断ち切れていないうちに、社会的制裁を突きつけてやるのです。その逆神の協力者を表に引っ張り出すことで、S区でリカのエネルギー剤にされた若い女性たちの実際を世間に公表しましょう。リカを人間界に晒して、歴代の暗者たちが発した波動とは違った牽制・プレッシャーを産むことは、人間たちが目の前の問題に目を背けず、団結すれば可能です≫
”浅間さん…、あなたの熱い気持ちは確かに受け止めました。何しろ、明日、強制契約させれた(?)JリードレンのOLと会います。沢井の読みでは、裏切者もそのOLと接点があるらしい…”
”我々人間が作りだした法で治めることのできない暗黒社会には断じてさせない。その為には、あなたの知恵をまたいただきくことになります。人口透析の身で大変だが、頑張って下さい…”
日下は便せんを封筒へと戻すと、事務所の金庫に入れた。
”万一、俺も沢井も死んだら、あの手紙は次に繋いでいかないと…”
弁護士である自分に、余命いくばくもない浅間ユイが望んだもう一つのこと…。
日下は彼女からの手紙で”それ”を悟っていた。
日下は、あくまでかつては人間だった、浮遊するエネルギー体から、400年の時を経て”故郷”であったこっちの世界に降り立つことが叶った”彼女”の気持ちに立って考えてみた。
”リカは、こう考え着いたんじゃないか。単にこっちに居る滞在時間を長くする為に、若い女をもっともっとと食い漁ってていては、所詮イタチごっこで疲れる。それよりも、いっそ自分の思い通りに動かせる人間を使えば、エサの確保も効率よくできるし、人間の世界で自由にやれる土壌作りにもなると…。そこでリカは、こっちの世界での使用人をゲットしようとしている。いや、厳密にはもう、若い女がリカに魂を売って、人間を超えた力を得てる可能性が強い”
”今はなんとか、浅間さんがありったけの波動で、最低限のけん制をしてくれてるが、彼女の言ではもう牽制の用は足していないとな…。ただ、まだ波動を発する人間は残っているとのアピールはできていると。俺にはそれが今のリカが暴走することの歯止めになってる気がする。ならば、浅間ユイが生存している間に、他の人間で何か手を打っていかないと…”
まさしく、浅間ユイが弁護士である日下辰巳にしたためた長い手紙によって、彼女の必至な訴えを彼に届けることができた。
それは間違いなく…。
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≪…一線を超えた逆神をこのまま見過ごせば、人間社会は混濁の波にのまれます。そんなこと、絶対阻止しないとならない。幸い、自分の好みに忠実なリカは、今のところ”活動範囲”が限定されています。ここを突きましょう。我々は、S区周辺に絞ってマークすべきです≫
≪そこで、逆神にまやかされた裏切者をあぶり出し、まだ人間のしがらみを断ち切れていないうちに、社会的制裁を突きつけてやるのです。その逆神の協力者を表に引っ張り出すことで、S区でリカのエネルギー剤にされた若い女性たちの実際を世間に公表しましょう。リカを人間界に晒して、歴代の暗者たちが発した波動とは違った牽制・プレッシャーを産むことは、人間たちが目の前の問題に目を背けず、団結すれば可能です≫
”浅間さん…、あなたの熱い気持ちは確かに受け止めました。何しろ、明日、強制契約させれた(?)JリードレンのOLと会います。沢井の読みでは、裏切者もそのOLと接点があるらしい…”
”我々人間が作りだした法で治めることのできない暗黒社会には断じてさせない。その為には、あなたの知恵をまたいただきくことになります。人口透析の身で大変だが、頑張って下さい…”
日下は便せんを封筒へと戻すと、事務所の金庫に入れた。
”万一、俺も沢井も死んだら、あの手紙は次に繋いでいかないと…”
弁護士である自分に、余命いくばくもない浅間ユイが望んだもう一つのこと…。
日下は彼女からの手紙で”それ”を悟っていた。