都市夢ーとしむー
第七章/降りたつ魔の息
邪悪な連携
その1/ロビーにて
この日の午後、海外営業部の清田イズミは、次長補昇格の正式辞令を受けた。
女性初のポストゲットに、Jリードレンの社内は再びざわめいていた…。
...
午後2時半…、イズミは1階ロビーで広告会社の女性社員と会っている。
Jリードレンとの事業提携に際し、ルルーヌが東京都内に構えるオフィスに展示用するポップのデザインを発注していたのだが、サンプルが出来上がったので、その確認ということだった。
「うん、この二つだな…。週明けには先方にサンプルを届けてきますので、今日預かっていいかな?」
「はい。では…、今ケースに収めますので…」
こんなやり取りにも受付の女性社員二人は、何やら笑みをこぼしながらイズミに熱いまなざしを向けている。
「あのう…、これからは清田さんを何とお呼びすればいいんでしょかね?上司にその辺、しっかり聞いて来いと言われてまして。今後、失礼があるといけないと…。伝え聞いているところでは、海外営業部次長補って役職に昇給されてとか…。そのものズバリでいいんですか?」
「ははは…、今まで通り清田さんでいいよ。またすぐ降格するかもしれないし」
「いやあ、そんなことは…。でも凄いですよね。ウチの会社でも時の人ですよ、清田さんは。ああ、失礼しました。清田次長補でした」
イズミは思わず吹き出して笑っていた。
”正直、悪い気しないわ”
これが偽らざる彼女の気持ちだった。
...
「…今回、業務推進の影山さんを2階級昇進で抜いちゃったんですよね?確か動機で下よね」
「そう。彼女の英語力はハンパないわよ。社交力だけじゃないわ、彼女は」
「そうらしいですね…。あっ…、その影山さんじゃないですか、エレベーターから降りてきた方…」
イズミは後方のエレベーターを振り返った。
”確かにジュリだわ…。誰か連れて、明らかに社外に出るようだわ…”
影山ジュリは後輩と思われる女子社員を伴って、エントランス方向に早足で向かって歩いていたが、イズミに気づいたらしく、ロビーに方向転換した。
すでに視線を交わしているイズミはゆっくりとソファから立ち上がった。
”ジュリ…。早晩、対決ってことだろうけど、ここは戦い前の挨拶ね”
イズミはまなじりを決していた。
その1/ロビーにて
この日の午後、海外営業部の清田イズミは、次長補昇格の正式辞令を受けた。
女性初のポストゲットに、Jリードレンの社内は再びざわめいていた…。
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午後2時半…、イズミは1階ロビーで広告会社の女性社員と会っている。
Jリードレンとの事業提携に際し、ルルーヌが東京都内に構えるオフィスに展示用するポップのデザインを発注していたのだが、サンプルが出来上がったので、その確認ということだった。
「うん、この二つだな…。週明けには先方にサンプルを届けてきますので、今日預かっていいかな?」
「はい。では…、今ケースに収めますので…」
こんなやり取りにも受付の女性社員二人は、何やら笑みをこぼしながらイズミに熱いまなざしを向けている。
「あのう…、これからは清田さんを何とお呼びすればいいんでしょかね?上司にその辺、しっかり聞いて来いと言われてまして。今後、失礼があるといけないと…。伝え聞いているところでは、海外営業部次長補って役職に昇給されてとか…。そのものズバリでいいんですか?」
「ははは…、今まで通り清田さんでいいよ。またすぐ降格するかもしれないし」
「いやあ、そんなことは…。でも凄いですよね。ウチの会社でも時の人ですよ、清田さんは。ああ、失礼しました。清田次長補でした」
イズミは思わず吹き出して笑っていた。
”正直、悪い気しないわ”
これが偽らざる彼女の気持ちだった。
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「…今回、業務推進の影山さんを2階級昇進で抜いちゃったんですよね?確か動機で下よね」
「そう。彼女の英語力はハンパないわよ。社交力だけじゃないわ、彼女は」
「そうらしいですね…。あっ…、その影山さんじゃないですか、エレベーターから降りてきた方…」
イズミは後方のエレベーターを振り返った。
”確かにジュリだわ…。誰か連れて、明らかに社外に出るようだわ…”
影山ジュリは後輩と思われる女子社員を伴って、エントランス方向に早足で向かって歩いていたが、イズミに気づいたらしく、ロビーに方向転換した。
すでに視線を交わしているイズミはゆっくりとソファから立ち上がった。
”ジュリ…。早晩、対決ってことだろうけど、ここは戦い前の挨拶ね”
イズミはまなじりを決していた。