都市夢ーとしむー
その4/四者集う


「嬉しい…。なんて嬉しいんだ…。ここにいる三人はみな、私を絶対リカには渡さないと誓ってくれてる。そんなことさせてたまるかって、闘志をみなぎらせて‥。なんて私は幸せなんだ…」

四者が集った都内某所、日下法律事務所の応接室は、約2時間半強、濃密かつ有意義な話し合いが交わされた。
それは、四者による面談・会談・ミーティング・協議・決起集会…、それらすべての要素を含んだ、人間たちの知恵を出し合う場であった。

四人はすでに共闘体制を確認し合い、即座に行動開始とした。
焦点は翌日金曜夜の、郡司ヒサシ対策だった。
もっとも、事実上それは影山ジュリ&女魔人リカ対策と言えた。

そして、その対応策はその日のうちに確定された。
この結果、イズミの抱えていた、この世の者ではないであろう連中との孤独な戦いは、もはや総力戦の体を成した。

”今日の1時間半は録音してある、早速明日、速達で長野の浅間さんに送ろう‥”

沢井は帰宅後シャワーを浴びながら、興奮気味にそう心の中で呟いた。
そして、この2時間半を再度振り返っていた…。


...


「…先生、お約束の方、お見えになったようですよ」

「うん…、あやちゃん、こっちに通して」

「はい…」

”来たか…。今日の二人の話次第で、俺と浅間さん、それに日下の運命が決するかもな。そういう意味では、二人を迎えるこの瞬間は緊張感がみなぎる…”

...


四人は沢井の仕切りで、各々あいさつを交わした。
清田イズミと志田慎也が、こわばった面持ちで元刑事の沢井と現役弁護士の日下に、”よろしくお願いいたします!”と挨拶する様は、まるで神仏すがりつくかのような絵柄を呈していた。

そんな若い二人を沢井と日下は何とも微笑ましく思えたが、同時に、恋も仕事も全力疾走がプンプン匂うイズミと慎也に一種の母性愛を感じていた。

”こんなピュアに生きてる若者を、あんな”やおら”に持って行かれたまるか!”

”俺は今、ナマで目の当たりにしたこの二人の若者から、純粋に生きる故に抱え込んでしまった、のたうち回るような苦悩をダイレクトに感じ取った。法曹の世界から困窮の極みに身を追い込だ弱者への寄り添う姿勢をライフワークとしたこの俺がだ、ここでスルーできっかよ!”

沢井信哉と日下辰巳…。
藁にもすがる思いでココに訪れたイズミと慎也へは同様の思いを寄せながらも、己に向けた決意に至るモチベーションは根本で相違していた。

だが、当事者の沢井と日下は、互いの胸の内を汲み取っていた。
そして二人は共に思い抱くのだった。
だからこその共同戦線だと…。




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