都市夢ーとしむー
その8/浮かび上がった人物
元刑事・沢井信哉の目には、自らの描いた相関図から、”ある人物”がくっきりと浮かび上がって映っていた。
「清田さん…。今日ここに来る前、Jリードレン本社の1階ロビーで影山ジュリと行き遭った際、確か彼女の傍らには同じ部署の後輩が同席してたとおっしゃってましたね。それで、その子ともあいさつを交わしたと…。その人物は、この藤沼葵という女性職員で間違いないですか?」
「ええ、その時一緒だったのは確かに彼女です」
「では次です。自分の聞き間違いでなければ、ヘンネルとかっていうカナダ企業の提携プロジェクトでは、その影山が藤沼って後輩に実質一任すると、営業部のあなたにはっきりと宣言した…。そうでしたよね?」
「まあ、”宣言”って表現までしていいのか、それは何ともいえませんが…。ただ、海外企業との共同事業折衝というビッグプロジェクトの責任者を課長職とはいえ、私と同期のジュリが任命されただけでも異例の抜擢です。なのに、その準備対策室が走りだす前の今、営業部の私に後輩女性へ丸投げみたいな言いっぷりっていうのは、やはり不自然に感じました」
「…」
沢井の眼光は鋭く光った。
...
「その影山ジュリは、女性初の課長職の座をゲットした。ところが今回、同期のライバルであった清田さんがフランス・パリで現地企業との提携を持ち前の語学力をフルに生かして、みごと提携合意に結実させ、凱旋帰国した…。その最中、彼女は対カナダ企業の折衝PTを立ち上げてもらってその責任者に就いた。普通に見て、Jリードレンの然るべき上層部から懇意を得てると考えが及んでしまっても不思議ないと思う。ズバリ尋ねるが、影山を贔屓する上層部の人間って心あたりはありませんかね?」
沢井はイズミと慎也へは、ストレートにぶつけた。
...
二人はまた顔を見合わせて諮りあっていたが、すぐに結論が出たようで、この時はイズミが切りだした。
「あくまで噂の範疇です。それで踏まえてくれますね?」
「ああ、それは心得てるから心配は無用だよ、イズミさん」
「はあ…。あのう、業推部署を統括する副島常務がジュリをバックアップしてるというのは、社内的に通説となっています。ですから…」
ここで慎也が口を挟んだ。
...
「これも一部の噂ですが、二人の間は肉体関係にあると…」
”ふふ‥、また一人キーマンが浮上したか。こうなれば…、さあ、日下だな”
沢井はさりげなく日下の表情をチェックした。
”おお…、分かりやすいな、アイツ…。じゃあ、やっぱりかよ!”
日下は眉間に手を寄せ、明らか”参ったな…”と言った表情で、何やら自らに試案を迫っているようだった。
”仕方ないな…。この状況なら、あのことを3人には告げない訳にはいかんだろうし…。沢井め…、差察すしていやがっやな…”
日下の心は決した…。
元刑事・沢井信哉の目には、自らの描いた相関図から、”ある人物”がくっきりと浮かび上がって映っていた。
「清田さん…。今日ここに来る前、Jリードレン本社の1階ロビーで影山ジュリと行き遭った際、確か彼女の傍らには同じ部署の後輩が同席してたとおっしゃってましたね。それで、その子ともあいさつを交わしたと…。その人物は、この藤沼葵という女性職員で間違いないですか?」
「ええ、その時一緒だったのは確かに彼女です」
「では次です。自分の聞き間違いでなければ、ヘンネルとかっていうカナダ企業の提携プロジェクトでは、その影山が藤沼って後輩に実質一任すると、営業部のあなたにはっきりと宣言した…。そうでしたよね?」
「まあ、”宣言”って表現までしていいのか、それは何ともいえませんが…。ただ、海外企業との共同事業折衝というビッグプロジェクトの責任者を課長職とはいえ、私と同期のジュリが任命されただけでも異例の抜擢です。なのに、その準備対策室が走りだす前の今、営業部の私に後輩女性へ丸投げみたいな言いっぷりっていうのは、やはり不自然に感じました」
「…」
沢井の眼光は鋭く光った。
...
「その影山ジュリは、女性初の課長職の座をゲットした。ところが今回、同期のライバルであった清田さんがフランス・パリで現地企業との提携を持ち前の語学力をフルに生かして、みごと提携合意に結実させ、凱旋帰国した…。その最中、彼女は対カナダ企業の折衝PTを立ち上げてもらってその責任者に就いた。普通に見て、Jリードレンの然るべき上層部から懇意を得てると考えが及んでしまっても不思議ないと思う。ズバリ尋ねるが、影山を贔屓する上層部の人間って心あたりはありませんかね?」
沢井はイズミと慎也へは、ストレートにぶつけた。
...
二人はまた顔を見合わせて諮りあっていたが、すぐに結論が出たようで、この時はイズミが切りだした。
「あくまで噂の範疇です。それで踏まえてくれますね?」
「ああ、それは心得てるから心配は無用だよ、イズミさん」
「はあ…。あのう、業推部署を統括する副島常務がジュリをバックアップしてるというのは、社内的に通説となっています。ですから…」
ここで慎也が口を挟んだ。
...
「これも一部の噂ですが、二人の間は肉体関係にあると…」
”ふふ‥、また一人キーマンが浮上したか。こうなれば…、さあ、日下だな”
沢井はさりげなく日下の表情をチェックした。
”おお…、分かりやすいな、アイツ…。じゃあ、やっぱりかよ!”
日下は眉間に手を寄せ、明らか”参ったな…”と言った表情で、何やら自らに試案を迫っているようだった。
”仕方ないな…。この状況なら、あのことを3人には告げない訳にはいかんだろうし…。沢井め…、差察すしていやがっやな…”
日下の心は決した…。