都市夢ーとしむー
その9/ある依頼


「お二人…、ここで弁護士の日下からは、この相関図に関連して君たちに伝えるべきことがあるようだ。聞こう」

「はい」(慎也&イズミ)

「これから口にすることは、完全に法曹に従事する者として守秘義務違反に抵触する。そこを十分汲んでもらってると解釈した上で話す。まあ、こういう事態に直面してる重大さは俺も認識してるつもりだしな」

「日下先生のお仕事に及ぶようなことは絶対、他言しません。ぜひ、お願いします…」

清田イズミからは、正に心を賭した覚悟といったものが、まるで沸き立つようだった。

「わかった。清田さん、俺の立場で言える範囲はここで話す」

”清田イズミはくんくんと頷き、身を乗り出してるな。隣の慎也も固唾を飲んでいるのは明らかだ。二人は何故一弁護士がこの事案に乗っかてるのか、ここからの日下の言でわかると悟っている…”

...


「…実はごく最近、Jリードレンの某役員からオポジションの洗いを依頼されてね。その依頼主は、そこの副島さんだ」

「…」

「志田君、清田さん…、君たちは副島の依頼動機、察してるようだね。…言ってくれないか、それを」

イズミと慎也はまたも顔を見合わせ、何やら問い合っていた。
ここで答えたのはイズミだった。

「副島さんは来月に控えた現副社長勇退の後任を禅譲されているようで、その人事はほぼ確定との見方が大半です。ならば、社長派はそれを前提として、その後の企業内パワーバランスを視野に入れ、”弱み”でもあれば握っていたいと…。要は何かスキャンダルはないかと今のうちに探りを取ってくる…。そう読んだ副島常務が、それに備えて今のうちからネタを漁っておこうと…」

彼女の”正論”に、その場の男3人は100%納得といった顔つきだった。




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