都市夢ーとしむー
その11/攻撃材料


「…それは数日前、原アユムのお母さんが送ってくれたものです。アユムの部屋で見つけたらしいんです。私宛の封筒に入った状態で机の引き出しから…」

”やっぱりか!原アユムは契約履行が目前と感じ、同僚の清田イズミに宛てて残したものなら、これの中身はおおよそ見当がつ…”

「まず、お二人には一通り目を通していただきたいんです…」

「じゃあ、俺はパソコンでデータを開いてみる。お前は先にこっちのコピーした資料を頼む」

日下は机の上のCDを手にして、沢井に告げると、”相棒”は「わかった」と歯切れのいい返事と同時にコピーの束を掴んだ。

「…ああ、あやちゃん、お茶頼めるかな?

これからしばらくの間、自分と日下が確認作業で沈黙することをイズミらへ気を遣う日下に、沢井はクスッと笑いをこぼしていた。

...


約10分弱で沢井と日下は”それら”に目を通した。

「ふう…、日下。これ…、文字通りじゃねえかよ」

「ああ…。経費の不正計上はともかく、この飲酒事故の偽証申告は完全に犯罪だ。表ざたになれば、影山ジュリだけでなく、副島の首も吹っ飛ぶ。身代わりになった人物の証言とか、証拠としての精度が高いぞ」

「…イズミさん、志田君。日下が今言った通りだ。これは”奴ら”と構えるに当たって、有効な攻撃材料になる。俺達を信じてくれて感謝してる」

「沢井さん…。じゃあ、これ、武器になるんですね?ジュリとあの女に対しての」

「なる。まあ、使い方次第でってことはあるが…。なら、ここでボードの相関図に戻ってみるか」

4人は再びホワイトボードに目を移した。

...


「こうなると、もう推論は明確になった。…原さんがイズミさんに残したこの資料、彼女が所持していたことを影山ジュリが承知してるのは間違いないだろう。たぶん、原さんが亡くなる前日、Jリードレンの社内で彼女は影山に”コイツ”を突きつけたはずだ」

イズミと慎也は口を真一文字にして、沢井の顔をじっと見つめながら聞き入っていた。

「…志田君、原さんがこの時期に、なぜこの行動かってことは、君がよく承知していると思うが‥」

これは沢井のカマ入れだった。
だが、読みの確信は高かったので、慎也には敢えてオウム返しを狙ってぶつけてみた。
そに志田慎也は即座に反応した…。



< 111 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop