都市夢ーとしむー
その13/仮説


「…それともう一つだ。直接的な表現ではないが、原さんの転落を認めたってことは、その日の翌朝、群馬の実家で睡眠中に息を引きった彼女の死とは、現実的に矛盾を起こしてることも認めたってなるよな。8階建ての屋上から落っこちた人間が地上につく前に消えちまって、翌日の朝、300キロ離れた実家で病死だ。超常現象かマジックか幻想か…、そのいずれでないと説明が付かない」

「…」

他の3人はまさに息を飲んでいる。
おそらく同じ思いを心の中で呟いて。
”全く、その通り”と…。

...


「ジュリの不可解な行動は、これら一挙まとめて、イズミさんを試してる、…いや、量ってるってニュアンスの方が正確かな。極めて挑戦的にけしかける姿勢でな。では、それも何でとなれば、すでにリカの手に入った影山は、イズミさんが”あの女の”解約相手”と承知してるはずだから、当のイズミさんがどこまで知っていて、どう出てくるかを探ってるとね」

ここで沢井は一息つくと、テーブルからコーヒーを手にして一口含んだ。

”沢井には見えてるんだ。たとえ会ってことはなくとも、この世の者でない女魔人とかから目をかけられば、人間辞めるって決断をした性悪女の本性が。これは何も元刑事だからって訳ではないと思うが…”

沢井は意識的に間をおきながら、この3人、特にイズミと慎也には、かみ砕かせる時間を与えているようだった。

...


「…俺は影山ジュリの”立場”から考えてみた。ヤツはJリードレンから去る覚悟をしていると思う」

「…」

イズミと慎也は明らかに”えー!”という顔つきになっていた。

「…今日、二人の話を噂も含め耳にしながら、その相関図を描いてて気づいたのはさ、今までの結果として、”Jさん”がリカに誘導されているという点だ。ヤツは然るべき目的を持って、Jリードレンの影山ジュリを釣ったんだろうよ。…俺はある意味、女魔人リカはそのことによって、この会社を乗っ取ったと捉えている。あくまで”部下”である、人間を裏切った人間社会に生きる影山とは、連携を備えて行動してるってことだ。すべてに渡って…」

”Jリードレンがこの世の者でない、あの女が乗っとったなんて…”

イズミと慎也は、まさに衝撃の二文字に襲われた。




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