都市夢ーとしむー
その3/トイレにて



”一体、どういうこと?なんでアユムは群馬で死んでるのよ…”

同僚の話を聞いて、ジュリは急に動悸が激しくなりトイレに入って気持ちを落ち着けようと努めるが、頭の中はパニック状態から抜け出せない…。

”ザーッ!”

ジュリはトイレの手洗い場で顔をごしごし洗い、バッグから取り出した口紅を塗っていた。

”とにかく仕事場では平静をよそわなくちゃ…。変に怪しまれたらまずいし。落ち着くことよ、まずは…”

口紅を手に、ジュリは鏡に映る自分へ暗示をかけるように、心の中で何度もその言葉を繰り返していた。


...


その最中のことだった…。
再び手の甲に強い痛みが走ったのだ。

”痛い!”

”コロン、コロコロ…”

ジュリは思わず手にしていた口紅を床に落としてしまった。
腰をかがめた彼女は、タイル張りの床に転がる口紅を拾おうと痛む右手を差し伸ばした。
すると…、ジュリの視界には女の足があった。

”ぎゃー!”

驚いたジュリは後ろに尻もちをついて、その女を見上げた…。
ジュリの両目が捉えたのは、黒いスーツを着た背の高い若い女だった…。

...


”!!!”

ジュリは絶句して、尻もちをついた格好で、更に数歩後ずさりしていた。

”この人、いつの間に…”

そんなジュリの声を察したかのように、その女は口を開いた…。





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