都市夢ーとしむー
その2/うわさ



夕刻、東京都心の某所にある有名コーヒーショップは、今日も満席である。
奥の席では、3人の女子中学生がスマホを片手に、おしゃべりに夢中だ。

...


「あれ?また○○駅で、人身だって~」

「すっかり、名所になっちゃったね。飛び込みの」

「でも、電車にひかれんのと、首吊りどっちがましかな」

「どっちも、ばってんでしょ。楽に死ねる方法なんて、ある訳ないしね」

よくある会話である。

...


すると、一番背の低い子が、手にしていたコーヒーカップを置いて話し始めた。

「そういえば友達が言ってたけど…、あるサイト見たら、苦しまないで”消えられる”方法があるって…」

他の二人は身を乗り出した。

「消える?死ぬんじゃないの?」

「死ぬんだろうけど、死体はなくなるらしいよ。契約するんだって。楽にこの世からいなくなれる代わりに、何かを渡すらしい」

二人はなるほどといった表情をして、顔を見合わせた後、一人が言った。

「それって、外国の悪魔の話みたい。魂を売り渡して、願いがかなられるんでしょ」

「魂じゃないらしいよ。フェロモンみたいなもんなんだって」

「??」

二人はきょとんとして、背の低い子の話に耳を傾けた。


...


「でも、契約できるのは若い女の人だけで、しかも、美貌とか、いろいろ条件が厳しいんだって」

「・・・」

「契約の相手はリカっていう黒いスーツ着た女で、170㎝くらいの背があるって。こっちの世界の人じゃならしいんだけど、都会が好きで、東京によく現れてるらしいんだ」


...



ふと、3人はうっすらと暮れてきた、窓の外に目をやった。
視界に広がる都会の雑踏には、交差点を足早に行きゆく人々で溢れている。
そこには背が高い、黒いスーツ姿の女性も何人か闊歩していた…。





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