都市夢ーとしむー
その４/要求


「アンタ、私の僕になりなさい！」

”シモベ…？”

ジュリには、リカの口から出たその言葉が理解不能だった

「意味が分からないわ。どういうことよ、それ！」

「アンタは、私がこの天井獄からそっちの世界に舞い降りた際の召使いとして尽くすのよ。私の意に従い、そっちの世界で動いてもらうわ」

「…」

これも、ジュリには意味不明以外の何物でもなかった。


...


「私はそっちの世界にも、だいぶ”実体”を保つことができるようになった。その源となっているエネルギーが都会に跋扈する若い女よ。これからはより栄養価の高い女と契約して、効率よく実体を保持できる足場つくりに着手したいの。その為に、ジュリ、アンタが私の僕となって働くのよ」

ここでジュリは、リカが自分に求める主旨は漠然とだが掴めた気がした。
そして、それを断れば、自分の身は破滅すると…。
すなわち、さっき常務の江副から提示された抜擢もすっ飛び、アユムを殺した犯人としてブタ箱行きになる。

これは漠然とではなく、すでに確信の体を成していたのを、ジュリ自身自覚していた。


...


「どうやら、概ね理解できたようね。今の自分が置かれている立場と私の意図が…」

「あなたの要求、断れば私は一巻の終わりって訳なんでしょ？」

「そういうこと。私がそっちの世界の”昨日”に再び手を加えれば、アンタにとっての現実などどうにでもなる。アンタを私の掌に乗せ、選択肢がないことをわからせた段階で話してるのよ。で、どうする？」

「…やるわ。何でも」

「決まりね」

ジュリには、この時のリカが無表情で笑っているように見えた。





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