都市夢ーとしむー
その3/聴取


リカが姿を消した瞬間、エレベーターは日常の空間に戻った。
3階に止まると、男性社員が二人乗ってきた。

「ああ、影山さん、こんちわ」

「どうも…」

二人とも営業部所属で、周知の2こ下だった。
推進企画の先頭に立つジュリにとっては、明らかな競争相手となる。
ジュリは常日頃、こういった場面では威圧するような振る舞いを意識していた。

”こうとなったら、思いっきり行くわ”

急転直下…、筋金入りの若き悪女は思わぬ”力”を与えられ、自分の中で眠っていた何かが目覚めたかのような感触だった。
ジュリの二人に注がれる視線には、ギラギラ感がみなぎっていた…。


...


午後2時過ぎ…。
ジュリは再び呼び出しを受けた。
今度は総務課からだった。

”おそらくアユムの件だ…。ひょっとっする警察かもしれない…”

すぐにそんな察しがついたが、既に彼女には今朝までの怯えは消え失せ、いつも通りの堂々とした佇いにを取り戻していたのだ。


...


総務部の応接室に入ると、案の定だった…。

「ああ、影山君、ご苦労様。こちら群馬から見えた刑事さんだ」

「いや、お仕事中恐れ入ります。T署の土田です」

総務課長の福原がそう言うと、中年のやや太った刑事がソファから立ち上がり、警察手帳を手にした。

「遠いところ、ご苦労様です。推進企画室の影山です…」

ジュリは既によそ行きモードに入って、しおらしくあいさつした。

”群馬からわざわざか…。さあ、どんな話になるんだろう…”

リカの手が加えられたことを知ったジュリは、もう余裕の構えで、むしろこの後の展開に興味を注がれるほどだった。





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