都市夢ーとしむー

第三章/純なりし邪

天上獄
その1/極限刑、立ちんぼ



リカは”立ちんぼ”7体の周りをゆっくりと回っている。
一体、一体、じっくりと観察しながら…。

”NO3は、いよいよ立ち腐れね…”

一体を前にして、リカはそう見定めていた。
NO3は既に地面に両足が根ざし、膝のあたりまでが朽木と化している。
他の6体のように呻き声さえも途絶え、瞬きもめったにしない…。


...


その隣は、カップルで”立ちんぼ”の刑に処せられた2体だった。

”アハハ…、こいつら、ついに握り合った手、放しちゃったじゃない…”

2体は直立不動で、”仲良く”正面のリカに絶望の眼差しを向けていた。

”ううっ、ううっ…”といううめき声を上げながら…。

「どうしたのよ!せっかく隣どうしで立たせたあげてるのに。百年の恋も立ったまんまじゃ、萎えてきたかしら、ハハハ…。お前らの身が枯れるまではまだまだよ。ずっと立ち続けるのよ!」

リカは女の方の首を右手で掴むと、顔を近づけてそう言葉を叩きつけた。
すると、女の目からは淀んだ液体が滲み出て、やがて滴となって落ちていった。
ひなびた地面は無表情でそれを瞬時に吸い込むだけだった。


...


最後の一体は今や終焉の情景を晒していた。
13羽の銀ガラスがほぼ朽木状態の頭部に群がり、”ガァ、ガァ”と猛りながら食いつついている…。

”…もうじき終わるのよ。長きにわたった地獄での悔恨が…”

リカはしばし、1体が1本に変態する過程を看取っていた。
極限刑の地である天上獄の立ちんぼの丘では、間もなく1体の元人間が1本の元人間となり、9本目の朽木が誕生しようとしていた。


...


「こんなところ、いきなりジュリに見せたら卒倒するわね。ここへ連れてくるのはもう少し先にするか…(苦笑)」

リカはそう呟くと、スッと立ちんぼの丘から姿を消した…。





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